株式会社 SSKPC

A01247 2000/01/01
V.90
98年9月にITU-TSが勧告した通信速度56kbpsに対応したモデムの規格。規格の策定中はV.PCMと呼ばれていた。56kbpsモデムでは、電話回線をデジタル回線として利用する、従来とは原理的に全く違った方式を採用することで速度の壁を突破した。  電話回線の信号は交換機で64kbpsのデジタル信号に変換される。受信側の交換機では、これを256段階の振幅を持つ8kHzの音に変換する。電話機や通常のアナログモデムではこれを音として処理するが、56kbpsモデムは、これを特殊なデジタル信号として受け取り、パソコンで扱える64kbpsのデジタル信号に変換する。64kbpsのうち8kbps分はエラーの検出に利用するので、最高速度は56kbpsになる。実際には回線にノイズが入ってくるので、多くの場合、56kbpsよりも遅い通信速度でつながることが多い。  56kbps通信が成立するための条件に、伝送経路にアナログ-デジタル変換処理を含まないということがある。このためには送信側がデジタル回線で接続されていなければならず、通常はプロバイダーやパソコン通信のホスト局から利用者への下り回線だけが高速化される。  56kbpsモデムが実用化されるまでは、電話回線では33.6kbpsが事実上の限界と思われていた。電話回線が音声帯域(300~3.4kHz)だけを伝送するように設計されているためである。9600bps以上のモデムが採用している直交振幅変調(QAM)方式では、音声帯域で33.6kbps以上の速度を出そうとしても信号がノイズに埋もれてしまい伝送が難しくなる。  現在では、通常の電話回線もアナログで伝送しているのは、加入者と交換機の間だけ。交換機と交換機の間はすべてデジタル化されている。そのため、アナログで送り出された音声やモデムの信号は、交換機に入る直前にデジタル信号に変換される。そして相手側で再びアナログ信号に変換する。このアナログ信号をデジタル信号に変換する時に発生する量子化ノイズが、アナログモデム同士の通信速度の上限を約35kbps程度にとどめる主な原因となる。